改修前の階段
階段を上から見た写真です.段の判別が困難な状況でした.どこからどこまでが一段分の幅なのか,見分けがつきません.段を踏み外さないよう,かなり慎重に速度を落として降りなければならない状況でした.ここを利用するすべての方から,段が見にくい,という評価を受けていました.
そこで,視認性向上を目的に,各段の段鼻にラインを描いていただくよう依頼し,対応していただきました.少々時間を要しましたが,階段を降りるのが楽になったのではないかと思われます.その様子を次の写真でご覧下さい.
改修後の階段
焦茶色のラインを描いていただきました.こういう場合,踏み面とラインのコントラストが重要となります.コントラストが低いと,せっかくラインを描いても視認性の向上にはつながりません.Americans with Disabilities Act Accessibility Guidelines ( ADAAG ) では,コントラストに関し,Michelson Contrast で少なくとも 0.54 以上必要となっています.複数のラインのサンプルを提案いただいたので,輝度計で輝度を測定し,コントラストを算出しました.その結果,踏み面とのコントラストが最も高いのは焦茶色のライン( 0.61 )であったため,写真のような結果となりました.ラインの幅は5cmほどあります.描く前は太すぎて圧迫感があるかと思いましたが,でき上がったのを見るとそんな感じは受けません.
こうした階段にラインを描くことの効果については,文末の文献をご参照いたくと,より詳細にわかると思います.改修を望まなくても,そのままでアクセスしやすい建築デザインというものをもっと本気で考えていただけたら,と思います.
文献
- 西脇ら (2000) ロービジョンから見たバリアフリーの病院建築. 臨眼, 54(6), 1211-1216.
- 小林ら (2000) ロービジョン者に配慮した移動環境に関する研究-段鼻に貼付したテープによる階段の視認性改善-. 国リハ研紀, 20, 55-59.